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多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)遺伝子診断 RET遺伝子検査

多発性内分泌腫瘍症2型(multiple endocrine neoplasia type2; MEN2)は甲状腺髄様がんならびにその前病変であるC細胞過形成や副腎褐色細胞腫、原発性副甲状腺機能亢進症を主徴とする遺伝性疾患です。MEN2は臨床像や家族歴に基づき、MEN2A、MEN2B、家族性甲状腺髄様がん(familial medullary thyroid carcinoma; FMTC)の3病型に分類されます。
MEN2AはMEN2全体の約85%を占め、甲状腺髄様がん、褐色細胞腫、原発性副甲状腺機能亢進症を主徴とします。MEN2BはMEN2の約5%であり甲状腺髄様がん、褐色細胞腫に加えて舌・口唇などの粘膜下神経腫,マルファン様体型,四肢過伸展,腸管神経節腫,角膜神経肥厚などの身体的特徴を併発します。FMTC はMEN2の約10%を占め、甲状腺髄様がんのみが唯一の臨床症状となります。

遺伝子検査

MEN2は生殖細胞系列におけるRET遺伝子の病的変異(機能獲得型変異)を原因とする疾患です。遺伝性髄様がんの95%以上に遺伝子変異が検出されますが、髄様がんや褐色細胞腫の家族歴がなく臨床的に一見散発性と思われる髄様がん症例においても約4~20%でRET遺伝子の病的変異が検出されます1)
甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010年版や多発性内分泌腫瘍症診療ガイドブックでは、「すべての髄様がんについて、散発性か遺伝性かを鑑別する点において、RET遺伝子検査を行うことが推奨される」とされています(推奨グレードA)1) 2)。また同ガイドラインでは遺伝性髄様がんの手術は甲状腺全摘が基本術式であり、術前に副腎褐色細胞腫の有無を検索し、手術適応があれば副腎手術を優先するとされています。RET遺伝子変異を有する小児では早期に甲状腺全摘を行うことが現実的に考えられますが、日本においては何歳からRET遺伝子検査を実施すべきかに関するコンセンサスはまだ得られていません。
RET遺伝子の病的変異は病型によって特定の部位に集中しています。MEN2AはRET遺伝子のエクソン10、11に、FMTCはエクソン10、11、13、14、15に、MEN2Bはエクソン16に集中しており、遺伝子変異は全てミスセンス変異です1) 2)(表1)。
米国甲状腺学会の甲状腺髄様がんに関するガイドラインでは、RET遺伝子の変異のタイプに応じてリスクレベルを4段階に分類し悪性度の程度に応じて甲状腺全摘の時期を考慮すべきとされています2)

表1. 主なRET遺伝子変異部位と臨床病型との関連2)

エクソン コドン 臨床病型
10 609、611、618、620 MEN2A、FMTC
11 630、634 MEN2A、FMTC
13 768、790 FMTC
14 804 FMTC
15 883 MEN2B
15 891 FMTC
16 918 MEN2B

遺伝形式と浸透率

MEN2は常染色体優性遺伝性疾患で、MEN2遺伝子に病的変異が認められた場合、その方の子どもには性別に関わらずそれぞれ1/2(50%)の確率で同じ病的変異が受け継がれます。
MEN2は浸透率が高く、いずれの病型も甲状腺髄様がんはほぼ100%に認められます。また、MEN2Aでは褐色細胞腫の浸透率が約60%、原発性副甲状腺機能亢進症が約10%とされています3)。MEN2Aにおける甲状腺髄様がん以外の病変は浸透率が100%ではないため、血縁者が少ない場合にはMEN2AとFMTCの厳密な区別は不可能とされています。
MEN2Bでは約70%に褐色細胞腫が見られますが、副甲状腺過形成はほとんど見られません。その他には粘膜神経腫がほぼ100%、マルファン様体型が80%に認められます1)
MEN2BはMEN2Aに比べてより若年で甲状腺髄様がんを発症する傾向にありますが、FMTCの変異では比較的高齢になってから発症する場合もあり、進行は比較的緩徐な場合が多いとされています。

参考文献
1) 「多発性内分泌腫瘍症診療ガイドブック」 金原出版,2013
2) 日本内分泌外科学会、日本甲状腺外科学会「甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010年版」 金原出版, 2010
3) Kloos RT et al. Thyroid 2009 ;19 :565-612.

検査の概要

甲状腺髄様癌の遺伝子検査として、RET遺伝子検査が保険収載されました(平成28年4月)。

保険点数 本検査は、厚生労働省保険局からの通達により、以下の要領にて保険点数が適応されています。
D006-4遺伝学的検査(3,880点)〈一部抜粋〉
(1)遺伝学的検査は以下の遺伝子疾患が疑われる場合に行うものとし、原則として患者1人につき1回算定できる。
イ.ハンチントン病、球脊髄性筋萎縮症、網膜芽細胞腫及び甲状腺髄様癌

発端者向け検査

検査項目
検体量
保存条件
所要日数
検査方法
MEN2スクリーニング 全血2mL 冷蔵 14~15日 SBS法
RET遺伝子のエクソン5、8、10、11、 13、 14、 15、16、および、該当エクソンのエクソン - イントロンの境界領域について塩基配列を解析します。
クイック
MEN2スクリーニング
全血2mL 冷蔵 5営業日 SBS法
「MEN2スクリーニング」を迅速に実施します。

*SBS(Sequencing by Synthesis)法
フローセル上に形成したクラスターをテンプレートとし、4種類の蛍光標識ヌクレオチドを用いて同時並行に1塩基ずつ合成し配列を決定する方法です。

血縁者向け検査

検査項目
検体量
保存条件
所要日数
検査方法
MEN2シングルサイト 全血2mL 冷蔵 14~15日 サンガ―法
発端者で検出された変異と同じ変異の有無を調べます。
ご依頼の際には、発端者で検出された変異の情報を必ずご提示ください。

家族性腫瘍遺伝子検査の受託について

弊社は、臨床検査として行われる家族性腫瘍関連の遺伝学的検査を受託するにあたって、日本衛生検査所協会「遺伝学的検査受託に関する倫理指針」を遵守します。また、厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」、日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」および日本家族性腫瘍学会「家族性腫瘍における遺伝子診断の研究とこれを応用した診療に関するガイドライン」に沿って同遺伝学的検査が実施されることを基本としています。同遺伝学的検査の受託にあたっては、ご依頼になる医療機関に必要な体制の整備をお願いしています。詳細は、「家族性腫瘍遺伝子検査 受託実施指針」をご参照ください。

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