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多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)遺伝子診断 MEN1遺伝子検査

多発性内分泌腫瘍症1型(multiple endocrine neoplasia type1; MEN1)はがん抑制遺伝子であるMEN1遺伝子の生殖細胞系列における病的変異が原因とされており、原発性副甲状腺機能亢進症、膵消化管内分泌腫瘍、下垂体腺腫を主徴とする遺伝性疾患です。
「多発性内分泌腫瘍症診療ガイドブック」では下記の診断基準が設けられています1)

診断基準 以下のうちいずれかを満たすものをMEN1と診断する
  • ① 原発性副甲状腺機能亢進症、膵・消化管内分泌腫瘍、下垂体腺腫のうち2つ以上を有する。
  • ② 上記3病変のうち1つを有し、一度近親者(親、子、同胞)にMEN1と診断された者がいる。
  • ③ 上記3病変のうち1つを有し、MEN1遺伝子の病原性変異が確認されている。

MEN1ではその他にも、副腎皮質腫瘍、胸腺神経内分泌腫瘍など様々な病変が認められます。

遺伝子検査

MEN1遺伝子に見られる病的変異は翻訳領域であるエクソン2~10のすべてのエクソンで検出されています。MEN1遺伝子には特定の部位に変異が集中する“ホットスポット”はないため、MEN1遺伝子検査では全てのエクソン(non-coding exonは除く)の塩基配列を解析する必要があります。1) また、遺伝子変異の部位と臨床像の関連は認められず、同一家系内でも患者ごとに臨床像は異なります。
変異の種類としては数塩基の欠失が最もよく見られる変異であり、数塩基の挿入やナンセンス変異を含めたtruncating mutation(タンパク合成が途中で中断される変異)が全体の約75%を占めます2)
臨床的に診断されたMEN1では家族歴が見られる場合、90%以上にMEN1遺伝子の病的変異が検出されますが、家族歴のない散発例でも約50%に病的変異が認められます2)
遺伝子検査によりMEN1と確定診断された場合、MEN1にあった外科的治療、薬物治療、定期的なサーベイランスなど散発性(非遺伝性)腫瘍とは異なるMEN1にあった医療が提供される根拠となります。また、発端者に病的変異が検出された場合、血縁者の発症前診断も可能になり未発症の時期から効果的なサーベイランスを実施することができます。

遺伝形式と浸透率

MEN1は常染色体優性遺伝性疾患であり、MEN1遺伝子に病的変異が認められた場合、その方の子どもには性別に関わらずそれぞれ1/2(50%)の確率で同じ病的変異が受け継がれます。浸透率は高く、ほぼ100%の患者が50歳までに原発性副甲状腺機能亢進症を発症します。その他にも膵・消化管内分泌腫瘍(ガストリノーマ、インスリノーマ、グルカゴノーマ、VIP産生腫瘍)をはじめ、下垂体腺腫(プロラクチン産生腫瘍、GH産生腫瘍、TSH産生腫瘍、ACTH産生腫瘍など)、副腎皮質腫瘍、胸腺・気管支神経内分泌腫瘍、皮膚腫瘍(顔面血管線維腫、結合組織母斑、脂肪腫)など様々な腫瘍が認められます(表1)。

表1 MEN1の病変と浸透率1)

病変 浸透率
原発性副甲状腺機能亢進症 95%
膵・消化管内分泌腫瘍 60%
下垂体腫瘍 50%
副腎皮質腫瘍 20%
胸腺・気管支神経内分泌腫瘍 7%
皮膚腫瘍 40%

参考文献
1) 「多発性内分泌腫瘍症診療ガイドブック」 金原出版,2013
2) Sakurai A et al. Clin Endocrinol 2012; 76(4): 533-539

検査の概要

発端者向け検査

検査項目
検体量
保存条件
所要日数
検査方法
MEN1
スクリーニング
全血2mL 冷蔵 21~22日 SBS法およびMLPA法
MEN1遺伝子の全エクソン(non-coding exonを除く)およびエクソン-イントロン境界領域の塩基配列を解析します。
また、あわせてMLPA法によりTP53遺伝子のエクソンレベルの比較的大きな欠失や重複を解析します。
クイックMEN1
スクリーニング
全血2mL 冷蔵 14~15日 SBS法およびMLPA法
MEN1スクリーニングを迅速に実施します。

*SBS(Sequencing by Synthesis)法
フローセル上に形成したクラスターをテンプレートとし、4種類の蛍光標識ヌクレオチドを用いて同時並行に1塩基ずつ合成し配列を決定する方法です。

血縁者向け検査

検査項目
検体量
保存条件
所要日数
検査方法
MEN1
シングルサイト
全血2mL 冷蔵 14~15日 サンガ―法またはMLPA法
発端者で検出された変異と同じ変異の有無を調べます。
ご依頼の際には、発端者で検出された変異の情報を必ずご提示ください。

家族性腫瘍遺伝子検査の受託について

弊社は、臨床検査として行われる家族性腫瘍関連の遺伝学的検査を受託するにあたって、日本衛生検査所協会「遺伝学的検査受託に関する倫理指針」を遵守します。また、厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」、日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」および日本家族性腫瘍学会「家族性腫瘍における遺伝子診断の研究とこれを応用した診療に関するガイドライン」に沿って同遺伝学的検査が実施されることを基本としています。同遺伝学的検査の受託にあたっては、ご依頼になる医療機関に必要な体制の整備をお願いしています。詳細は、「家族性腫瘍遺伝子検査 受託実施指針」をご参照ください。

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