MSI検査キット(FALCO)

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監修
埼玉県立がんセンター
腫瘍診断・予防科部長 赤木 究 先生
国立がん研究センター東病院
副院長 吉野 孝之 先生
愛知県がんセンター
薬物療法部医長 谷口 浩也 先生

MSI検査とは

細胞分裂の過程においてDNAが複製される時に一定の確率で複製ミスが発生しますが、細胞にはこのミスを修復するミスマッチ修復(mismatch repair:MMR)機構が備わっています。このMMR 機構に異常が発生した場合、ゲノム中に存在する1~数塩基単位の繰り返し配列であるマイクロサテライトの繰り返し回数に変化が生じやすくなります。このような変化はマイクロサテライト不安定性(microsatellite instability:MSI)と呼ばれ、MMR の機能欠損を予測するバイオマーカーとして利用されています。MSI 検査は、がん細胞におけるマイクロサテライトの繰り返し回数の変化の有無を調べるDNA検査です。

MMR機能欠損とMSI-Highがん

MMR機能欠損とMSI-Highがん

検査フロー

検査フロー

結果波形の一例

本キットはプロメガパネルを採用し、各マーカーの極大ピークがQMVR(グレー)の範囲外にも認められた場合MSI+ と識別し、MSI+ のマーカーが2 つ以上の場合は「陽性(MSI-High)」、1つ以下の場合は「陰性(MSI-Low またはMSS)」と判定します。なお、判定に注意を要するパターン(繰返し回数の変化(ピークシフト)が小さい)の場合、正常部との比較による再検査を行います。

A 結腸・直腸癌でのMSI-Highの代表的な泳動波形
B 結腸・直腸癌での陰性の代表的な泳動波形
C 判定に必要を要するパターン

プロメガパネル

プロメガパネル

結果判定

結果判定

使用目的

  1. キイトルーダ®(ペムブロリズマブ)の固形癌患者への適応を判定するための補助
  2. オプジーボ®(ニボルマブ)の結腸・直腸癌患者への適応を判定するための補助
  3. 大腸癌における化学療法の選択の補助(切除可能な進行・再発大腸癌における術後補助化学療法の選択)
  4. リンチ症候群の診断の補助

MSI-Highがんに対する抗PD-1抗体薬の作用機序(,

MSI-Highがんに対する抗PD-1抗体薬の作用機序

MSI-High/dMMR固形がんに対するキイトルーダ®の腫瘍縮小効果(

MSI-High/dMMR固形がんに対するキイトルーダ®の腫瘍縮小効果

未治療の治癒切除不能なMSI-High/dMMR結腸・直腸がんに対するキイトルーダ®の無増悪生存率(

未治療の治癒切除不能なMSI-High/dMMR結腸・直腸がんに対するキイトルーダ®の無増悪生存率

MSI-High/dMMR結腸・直腸がんに対するオプジーボ®・ヤーボイ®併用療法の腫瘍縮小効果(

MSI-High/dMMR結腸・直腸がんに対するオプジーボ®・ヤーボイ®併用療法の腫瘍縮小効果

本邦におけるMSI-High頻度(本キット使用)~リアルワールドデータ~

本邦におけるMSI-High頻度(本キット使用)~リアルワールドデータ~

診断・治療フロー

キイトルーダ®の固形がん又は結腸・直腸がん患者への適応を判定するための補助

キイトルーダ®の固形がん又は結腸・直腸がん患者への適応を判定するための補助

オプジーボ®の結腸・直腸がん患者への適応を判定するための補助

オプジーボ®の結腸・直腸がん患者への適応を判定するための補助

切除可能な進行・再発大腸がんにおける術後補助化学療法の選択の補助

切除可能な進行・再発大腸がんにおける術後補助化学療法の選択の補助
切除可能な進行・再発大腸がんにおける術後補助化学療法の選択の補助

リンチ症候群の診断の補助

リンチ症候群の診断の補助
  • 「成人・小児進行固形がんにおける臓器横断的ゲノム診療のガイドライン第3版」
    日本臨床腫瘍学会/日本癌治療学会/日本小児血液・がん学会編
    [:CQ1-1/CQ2-1]
  • 「大腸癌治療ガイドライン医師用2022年版」 大腸癌研究会編
    [:CQ22、:CQ15/CQ16/CQ18]
  • 「大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス第5版」 日本臨床腫瘍学会編
    [:6.2、:6.3、:6.4/6.5]
  • 「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2020年版」 大腸癌研究会編
    [:CQ19、:CQ17、: CQ14/図21]
  • 「悪性腫瘍に対するマイクロサテライト不安定性検査およびミスマッチ修復タンパク質に対する免疫組織化学検査の利用に関する見解」 日本遺伝性腫瘍学会
  • 「マイクロサテライト不安定性検査・ミスマッチ修復タンパク質の免疫染色検査について(患者説明文書例)」 日本遺伝性腫瘍学会
  • 「ゲノム診療用病理組織検体取扱い規定」 日本病理学会
  • 「ePrecision Medicine Japan: MMR genes (MSI)」 22世紀先端医療情報機構
  • 「遺伝性腫瘍 e-Learning: リンチ症候群」 22世紀先端医療情報機構

臨床性能試験情報

同等性試験情報

MSI-High 固形癌に対する臨床試験として、国際共同第Ⅱ相試験(164試験および158試験)、海外第Ⅱ相試験(016試験)、および海外第Ⅰb 相試験(028試験)が実施されました。これらの試験における患者選択には、各試験施設におけるMSI 検査またはMMR免疫染色検査が用いられました。
本製品の臨床性能を評価するため、164 試験、016試験、028試験に参加した患者の保存検体53 症例について本製品を用いて測定しました。本製品と各試験施設での検査結果との一致率は右表の通り、感度(陽性一致率)は100%、特異度(陰性一致率)は100%となり、本製品と臨床試験における結果の同等性が示されました。

同等性試験情報の集計表

相関性試験情報

GI-SCREEN CRC-MSI研究において研究用キットでMSI検査が実施された切除不能進行再発大腸癌435症例の保存検体を、本製品を用いて測定しました。研究用キットでは腫瘍部と正常部を比較する方法で判定されました。本製品と研究用キットでの結果の一致率は、右表の通り、感度(陽性一致率)は100%、特異度(陰性一致率)は100% となり、腫瘍部のみで判定する本製品と、正常部と比較して判定する研究用キットの高い相関性が示されました(参考文献 5))。

相関性試験の集計表

複数癌種試験情報

大腸癌を除く固形癌の16癌種(子宮体癌、胃癌、卵巣癌、胆管癌、乳腺癌、膵臓癌、食道癌、脳腫瘍、肺癌、皮膚癌、肝臓癌、胆嚢癌、尿管癌、前立腺癌、膀胱癌、小腸癌)の計59検体について、本製品で測定した結果、40例が陰性で、19例がMSI-High となり、大腸癌と同様にMSI+の識別が可能でした。

製品情報

MSI検査キット(FALCO)

MSI検査キット(FALCO)

試薬構成
  • ① プライマー・ミックス
  • ② 増幅酵素・ミックス
  • ③ レファレンスDNA
  • ④ DNAサイズマーカー
  • ※①~③は-20℃以下保存品。④はキット開封後、冷蔵保存品。①、③は遮光保存品。
製品番号 製品名 包装
FAL001(冷凍品) MSI検査キット(FALCO) 100反応

保険収載情報

保険点数 D004-2 悪性腫瘍組織検査
1 悪性腫瘍遺伝子検査
イ 処理が容易なもの
(1) 医薬品の適応判定の補助等に用いるもの:2,500 点
留意事項 (1) 「1」の悪性腫瘍遺伝子検査は、[省略]マイクロサテライト不安定性検査については、リンチ症候群の診断の補助を目的とする場合又は固形癌の抗悪性腫瘍剤による治療法の選択を目的とする場合に、当該検査を実施した後に、もう一方の目的で当該検査を実施した場合にあっても、別に1回に限り算定できる。[省略]
(2) 「1」の「イ」の「(1)」医薬品の適応判定の補助等に用いるものとは、[ 省略]医薬品の適応を判定するための補助等に用いるものとして薬事承認又は認証を得ている体外診断用医薬品又は医療機器を用いて、[省略]により行う場合に算定できる。[省略]
固形癌におけるマイクロサテライト不安定性検査
(15) リンチ症候群の診断の補助を目的としてマイクロサテライト不安定性検査を行う場合でも、使用目的又は効果として、医薬品の適応を判定するための補助等に用いるものとして薬事承認又は認証を得ている体外診断用医薬品を用いる場合には「1」の「イ」の「(1)」医薬品の適応判定の補助等に用いるものの所定点数を算定する。

参考文献

  1. 1) Le DT, Durham JN, Smith KN, et al. Mismatch repair deficiency predicts response of solid tumors to PD-1 blockade. Science. 2017; 357(6349): 409-413.
  2. 2) André T, Shiu KK, Kim TW, et al. Pembrolizumab in Microsatellite-Instability‒High Advanced Colorectal Cancer. N Engl J Med. 2020; 383: 2207-2218.
  3. 3) Overman MJ, Lonardi S, Wong KYM, et al. Durable clinical benefit with nivolumab plus ipilimumab in DNA mismatch repair-deficient/microsatellite instability-high metastatic colorectal cancer. J Clin Oncol. 2018; 36(8): 773-779
  4. 4) Akagi K, Oki E, Taniguchi H, et al. Real-world data on microsatellite instability status in various unresectable or metastatic solid tumors. Cancer Sci. 2021; 112: 1113.
  5. 5) Bando H, Okamoto W, Fukui T, et al. Utility of the quasi-monomorphic variation range in unresectable metastatic colorectal cancer patients. Cancer Sci. 2018; 109(11): 3411-3415

お問い合わせ先

MSI検査キット(FALCO)製造販売元

株式会社ファルコバイオシステムズ

〒613-0036
京都府久世郡久御山町田井西荒見17番地1
TEL:0774-46-2639
FAX:0774-46-2655
Mail:idenshi-grp@falco.co.jp